来る11月23日(月)、皇居にて新嘗祭なるものが行われます。 天皇がその年の新穀を天照大神などの神々に供え、自らも食するという宮中祭祀です。
その新嘗祭に献上される穀物のうち、粟については光栄にも東祖谷の雑穀生産組合が担当することになりました。 その概要については、こちらでも少し述べた通りです。
その献穀粟。 脱穀も終わり、いよいよ選別のフェーズに入りました。 本日はその様子をご紹介したいと思います。

選別作業とはこのような小さな粟一粒一粒から出来の悪いものを探し出して、除去する作業を指します。

拡大するとこんな感じです。 口が開いたものとか、色が黒いものとか、粒が小さいものが混じっています。 このような粒を取り除くのです。

対応するのは前期高齢者6人。 皆、既に目は薄れ、指は動かず、腰もすぐに痛くなります。
しかし他に頼る人はおりません。 自分たちでやるしかなく、虫眼鏡、ハズキルーペ、裸眼、、、、思い思いの装備(?)で作業に挑みます。
そのうち「いだだだだだ」と誰かが立ち上がり、ストレッチを始めます。 「歳じゃのぉ」と周りのみんなが揶揄います。
そもそも私たちは、年寄りが雁首揃えてこんな作業をしていること自体を滑稽に感じています。 少しでも辛そうな態度をとろうものなら、寄ってたかったネタにされてしまいます。
祖谷の人は総じて話好き。 特に冗談が大好きです。
そんな人が集まったこの作業場。 自由に動かせる口を遊ばせておく人はまずおりません。 あれこれおしゃべりしながら作業に当たります。
「若い頃はよう呑んだ」だの、「2人で3升飲んだ」だの、「おらはビール4ダース飲んだ」だの、まずは酒飲み話で盛り上がります。
それを聞いて、「そう言えば、酒5合と米5合ってどっちが多いんだろうなぁ」などと言う人が現れます。 爆笑が起こります。
「5合は5合じゃろ」、「脳みそないんか」、「頭あっちに行ってしもうとる」。 ひとしきり、みんなからいじられます。
そうこうしているうちに市役所東祖谷支所勤務のNお君がやってきます(選別作業は東祖谷支所の会議室でやっていた)。
彼は部屋に入ってくるなり、「おぉ~」と笑います。 彼からの見たら大御所ぞろい。 それが雁首並べて猿の毛づくろいでもしているように見えたのでしょうか?
吹き出すのを何とか堪えて「これは、これは」と繋げます。 感動詞しか出て来ないようです。
言葉に困ったNお君。 何かに気付いて突然顔が明るくなります。 そして言います。 「電気つけますね」。 パチッ。 私たちは暗がりで作業していたのです。
前期高齢者の集団。 どっと沸きます。 「どうも見にくいと思た」。 「こんだけおって誰っちゃー気ぃつかんのかえ~」。 「困ったもんじゃなのぉ」。
そうやってひとしきり盛り上がった後、また静寂に戻ります。 みんな作業に没頭し始めたのです。 そして誰かがボソッと何かを言うと、またみなが笑い、突っ込み、そして静寂に戻ります。
そんなこんなを繰り返すこと3時間。 なんとか目標とする量の選別を終えました。
と言う感じで進んだ選別作業。 大変楽しくも潤いのあるひと時でした。
思えばPCの前でばかり仕事をしていた会社員時代。 効率ばかりが求められ、無駄な時間はどんどん削られました。
仕事以外の会話は制限され、コミュニケーションの手段はもっぱら電子メールに変わりました。 会議室には”時短”や”参加者厳選”などのスローガンが貼られ、無駄話は悪とされました。 結果、人と人との付き合いは表面的となり、人間関係がどんどん希薄になっていった感じがします。
対して祖谷での作業。 どうでもいい話しかしません。 無駄の巣窟のようなものです。
しかしそこにいる人たちの人となりはよくわかるようになります。 それが分かれば安心感や信頼感に繋がります。 連帯感も生じます。 すると心が安らかになり、幸福な気持ちにもなってきます。
そして、そんな感じで選別された献穀粟。 古き良き伝統や風土とともに、ゆったりとしたこの空気感も天皇家に届くといいなぁと思います。
新嘗祭は11月23日。 たぶんその様子がテレビで放映されるでしょう。 献穀粟が映ったら、こうやって選別されたことを思い浮かべてください。 そしてみんなで感慨にふけりましょう。
最後に、参考までに、選別前後の粟の写真を並べておきます。上から順に、選別後、選別前、選別によって除外されたもの、です。



おわり。


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