三好ジオパーク指定サイトのご紹介(大歩危・祖谷編)

先週、祖谷いやには固い岩盤ともろい岩盤の2種類があり、固い岩盤が渓谷美を、脆い岩盤が人と自然の調和美を生み出している、という話をしました(詳細はこちら)。

実は、ジオパークでは、前者をジオサイト、後者をカルチュラルサイト、と呼んで、その顕在化と保全活動に努力しています。

ジオパークではもう一つ、エコサイトという定義もあります。 ジオ由来の人間の営みがカルチュラルサイトなら、ジオ由来の動植物の営みがエコサイトです。 貴重なものをそのように定義し、その維持・保全に努力しています。

三好ジオパークでもこの3種類が注目サイトとして指定されています。本日は三好ジオパークにおけるこれらサイトについて大歩危・祖谷に絞って紹介したいと思います。

ちなみに2025年8月現在で三好ジオパークにおけるサイトの数は以下の通りです(詳細はこちら)。
ジオサイト:18、 カルチュラルサイト:18、 エコサイト:6、 計:42

このうち本日紹介するサイトの数は以下の通りです。
ジオサイト:7、 カルチュラルサイト:7、 エコサイト:3、 計:17

これは三好ジオパーク指定サイトの40%が大歩危・祖谷に集中していることを意味します。しかもその多くが既に有名な観光地です。

このように大歩危・祖谷は、三好ジオパークの重要地域となっておりますので、地元の皆さんにも是非興味をもっていただき、できれば観光客に説明もできるようになってもらえればと思います。

マップ

サイトを紹介する前にマップを示します。下流→上流と順で番号を振っています。またジオサイト→カルチュラルサイト→エコサイトの順番にも並べています。なので、ジオサイトで最上流まで行くと、次はカルチュラルサイトの最下流に戻る感じで採番しています。

ジオサイト


はい
しゃ
構造と

しゅう
きょく
・石英脈群

難しいタイトルですが、要は国の天然記念物”大歩危の景観”を作っている岩石のことです。斜めに筋が入っていますが、これは背斜構造と呼ばれ、1億年以上前に海底にあったものが隆起してきたものです。大変貴重な岩なのです。

詳細はこちらをご覧ください。

背斜構造と微褶曲・石英脈群

②獅子岩

大歩危の遊覧船に乗ると見られるものです。単に獅子の形をしてて珍しい、というだけのものではありません。大雨の度に洪水に埋まり、激流の中で耐性の弱い石質部分が削られました。その結果、こんな形と模様になりました。その生成過程が貴重なのです。

三名さんみょうと祖谷の含礫片岩がんれきへんがん

下の写真のまん中少し左側に白いおできのようなものが確認できますか? これは石です。 地質学ではれきと言い、含礫片岩とは、中に礫を含んでいる岩のことを言います。この含礫片岩は徳島県の天然記念物に指定されています。

三名と祖谷の含礫片岩

有瀬あるせの地すべり地形

有瀬集落は西祖谷ですが祖谷川ではなく吉野川水系に属しているため私もまだ馴染みがありません。高知県に接する貴重な集落との認識なのでまた勉強し紹介できるようになっておきます。

とりあえずここでは、この集落がジオサイトに指定されていることだけを述べておきます。写真も持っておりません。

⑤ひの字渓谷

ここは有名な観光サイトにて説明は省略します。ご興味のある方はこちらをどうぞ。

祖谷には固い岩盤層があちこちにありますが、大抵このように大きくカーブしています。 地盤の弱いところを探して川が蛇行したせいでしょうか? そしてここはその代表的なカーブです。

⑥善徳・今久保の地すべり地形

先週傾斜地集落の代表例の一つとして紹介した場所です。地すべりと集落形成の様子がよくわかる貴重な場所の一つです。

善徳・今久保の地すべり地形

三嶺みうねの池

なぜ山の上に池があるのか? 山の稜線沿いの斜面がその重みで変形して窪地ができたためだそうです。 通常は線状にへこむため、”線状凹地おうち”と呼ばれるとか。 ジオ的に貴重な池なんです。 景観も大変良いですよね? 山小屋の屋根を赤く塗った人、ナイスです。

三嶺の池

カルチュラルサイト

⑧五所神社の大杉

吾橋集落という地すべり地帯に樹齢1000年を越える杉があるとか。1000年以上地すべりしていないという意味で重要のようです。

県の天然記念物に指定されているそうですが、ここも祖谷川でなく吉野川水系に位置します。私は馴染みがなく、写真もありません。 また勉強しておきます。

⑨徳善家住宅

西祖谷で唯一の入母屋造りのお屋敷です。ジオ由来の祖谷の歴史や文化を語る上で重要な住宅です。
※住宅は居住地のため、許可なく入るのはご遠慮ください。

徳善家住宅

⑩祖谷のかずら橋

大歩危と並ぶ三好市の二大観光地です。詳細はこちらを参照ください。

祖谷の特徴的な大地や自然がこの地特有の架橋文化を生みました。その点に意味があると思っています。

祖谷のかずら橋

⑪阿佐家住宅

東祖谷唯一の入母屋造りの武家屋敷です。祖谷の大地の成り立ちに由来して発生した歴史や文化を語る上でこの住宅は大変貴重です。詳細はこちらを参照ください。

平家屋敷阿佐家住宅

⑫落合集落

ここも地すべり跡にできた集落です。 対岸の中上集落から一望でき、集落がどのように形成されてきたか、大変よく分かるところです。 詳しく知りたい方はこちら
※下の写真は展望所の柵の水たまりを利用して上手に撮影したものです。友人からもらいました。雨上がりに展望所を訪れるとこういう写真が撮れるかも。

⑬平谷の治山堰堤群

70年前に大規模な地すべりが発生した場所です。再発防止のために治山堰堤群が作られた訳ですが、自然との調和が見事です。人と自然がコラボして作ったこの景観こそがTheカルチュラルサイトと思います。詳細はこちら

⑭剣山の御塔石おとういし

西日本第二の高峰”剣山”。その頂上近くにある石です。石灰岩でできています。
石灰岩とはサンゴが固まったもので、この地は3億年前は海底でした。
それがこんな高い位置まで隆起してきた。 まさにジオの申し子のような石です。

剣山の御塔石

エコサイト

⑮大歩危の河床かしょう植物群落

白い岩場で生きている植物がいます。 むき出しの岩があるということは日常的にここまで洪水が襲って来るということです。 しかも相手は岩。 栄養もありません。 夏はチンチンに熱くもなります。

そんな過酷な条件の中で生き延びる植物たち。 聞くも涙、語るも涙です。 その詳細はイワツツジ(キシツツジ)が咲き始める来年の4月頃にブログにしたためる予定です。

大歩危の河床植物群落

⑯落合峠のササ原

剣山、三嶺、天狗塚。。。 祖谷には人気の山がいろいろありますが、頂上が笹原ささはらで気持いいのが理由の一つと思っています。

そんな森林限界に育つ笹原。 落合峠でも見ることができます。 しかもここは車で行けます。

落合峠のササ原

三嶺みうね・天狗塚のミヤマクマザサとコメツツジ群落

三嶺や天狗塚の山頂付近も森林限界。ミヤマクマザサの群生地となっています。ただしところどころに岩場があり、そこにはコメツツジが群生しています。

森林も育たない過酷な環境下で共生するミヤマクマザサとコメツツジ。大歩危の河床植物同様、ジオ由来の貴重な植物達です。

コメツツジ

以上です。

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