祖谷と言えば”渓谷と傾斜地集落”。 そんな祖谷の風景を思い浮かべる時、私たち地元民は必ずコエグロが脳裏に浮かびます。 子供の頃から慣れ親しんだコエグロ。 無くてはならない存在です。
祖谷ではいまそのコエグロが盛んに作られています。 と言うことで、コエグロ作りを取材したので写真集として記録に残しておきます。
※コエグロとは何か? ご存じない方は”こちら”。

茅を刈る前の風景です。茅刈りの時期は目的によって変わります。
昔は穂が出て成長しきった後に刈るのが一般的だったそうです。 コエグロは肥料として使われますが、成長しきったものの方が肥料として長持ちするためです。 また種が飛んだ後に刈ることで茅場を維持する目的もあったようです。
しかし、人口減少や高齢化で畑が大きく減少した今では茅を増やす必要はありません。 成長した固い茅は高齢者には扱いにくくもあります。 ということで、早めに刈る人が多くなりました。
茅を茅葺屋根に使う場合はまた別です。 その場合は今でもしっかり成長させてから刈ります。

上の写真は茅を刈った後の様子です。

きれいに同じ方向に倒れています。 芸術的です。 こうすると茅を束ねるのが楽になります。
コエグロ作りは茅を刈った2~3日後がよいそうです。 刈った直後は茅が元気でまだ固く、日が経ちすぎると乾燥してそれはそれで固くなるからだそうです。


コエグロ作りの開始です。鎌を使うと集めやすいです。 集めたら、一握り程の茅を選んでまん中辺りから折り曲げます。


次に先ほどの束を左手で保持し、もう一握り、別の束を選んで先ほどの束の上に折り重ねます。


そしてしっかり押さえつけながら2つの束を全体に巻き付けます。


こんな感じで持ち上げながら巻き付けてひっくり返します。

最後に縛って完成です。
わざわざこんなやり方をしなくても、もっと楽な方法があるのでは? そう思ってしまいます。
そう思った私は、別の茅を一握り持って来て、それを紐代わりに縛ってみました。
縛れませんでした。 茎の部分が固くて、思うように扱えないのです。
対して、取材したやり方は、茅の穂側の柔らかい部分だけを巧みに利用して縛っています。
素晴らしい! 生活の知恵です!
コエグロの束作りを今度は動画で示します。
こちらの方がわかりやすいです。 先にこれを見せろ!と言われそう。
でも、動画では説明が難しいのでご勘弁。
ちなみにこの人はコエグロ作り70年のベテランです。 簡単そうに見えますが、初心者はこんなに簡単にはいきません。

作った束の塊です。奥の方に立てかけられています。
普通こんな感じで束を寝かせることはありません。しかし今回は地元小学生の郷土学習用に刈った後、時間がなくなってコエグロ作りはできませんでした。そこでこんな形で放置されています。

作った束は通常はこの写真のように円錐状に重ねられてコエグロになります。
まず小さい円錐を作り、その上に束を重ね、重ねては縛り、縛っては重ねる作業を繰り返します。 結果、円錐が少しずつ大きくなって立派なコエグロに変身する訳です。 縄には台湾くずという植物が使われていたそうです。
昔はまん中にポールを立てていたそうです。 大変大きかったこと、倒れると起こすのが大変だったことが理由だとか。
この日は、既に作っていたコエグロをばらして、再構築する実演をしてくれました。

以上で完成です。 コエグロは西阿波一帯で広く作られていますが、そのやり方は色々のようです。 ここで紹介したものは東祖谷地区で主に採用されているものです。
ちなみに、コエとは肥えのこと、グロとは塊を表すそうです。 畑の肥料に使う塊なのでコエグロと呼ばれるようです。


コメント