先週大歩危・小歩危の景色の眺め方について書きました。 しかしまだ説明し足りません。
この話、もう少し引っ張らせてください。 この地は ”ジオ(大地の営み)が生み出した自作自演のショーが見られる稀有な場所” だからです(と思ってます)。 その話をします。

先週、先行河川の話をしました。 大地の隆起よりも川による浸食速度が大きかったため大歩危・小歩危の景観ができたという話です。
この ”川による浸食” ですが、たぶん、と言うか間違いなく、大地の隆起が進むにつれて激しくなっています。
と言うのは、この隆起が最終的に四国山地を作ったからです。 標高2000m近い山々が太平洋に向かってそそり立つ、あの四国山地です。
四国では暖候期によく南風が吹きますが、この風は四国山地に向かって吹き付けます。 するとどうでしょう。 風の流れは山に遮られて上に登るしかなくなります。
そして山の斜面を駆け上がったその風は、というか空気は、上空で一気に冷やされ、大量の雨となって四国山地に降り注ぎます。 これが高知や徳島で雨が多い理由です。
そしてその雨の多くが吉野川に集まります。 雨が山に降り注ぎ、谷川となって斜面を下り、そのすべての水が祖谷川などの支流に流れ込む。 更にその支流の水すべてが吉野川に集まるのです。
かくしてこの川は、雨が降るたびに洪水となり、暴れ川としてその名を馳せる事になりました。
※吉野川は、利根川(関東)、筑後川(九州)と並んで日本三大暴れ川の一つと言われています
見てください、この写真。 川が 観光施設”大歩危峡まんなか” の1階フロア部分まで来ています。 吉野川の水位が優に10mは超えて増水しています。

暴れ川と化した吉野川は、2つの点で大歩危・小歩危の景観維持に寄与します。
一つ目は先行河川です。 これは前にも述べたとおりです。 しかしこの地はそれだけでは終わりません。
そもそもが大地の隆起に抗って生き延びた吉野川。 そのご褒美でしょうか? 隆起した大地が雨を呼び、雨が洪水となって吉野川の味方に付きます。 今後更に隆起が起こったとしてもそれ以上に川の威力が増し続けるでしょう。
これはもやはジオが作った無限ループ。 大歩危・小歩危のこの景観は永遠に不滅と言えるかも知れません。
二つ目は洗浄効果です。 頻繁に発生する吉野川の洪水が、大歩危・小歩危の巨岩の岩肌を洗い流します。 種や胞子がついても根を張る暇を与えません。 そのおかげで岩肌は常にスベスベ、いつ訪れてもきれいなお肌で私たちにその存在を鼓舞します。

と言うことで、先週から紹介している大歩危・小歩危誕生の壮大なドラマは、ジオ(大地の成り立ちや営み)が自分自身でシナリオを描き、自分自身で舞台を整え、自分自身で主演を張る、前代未聞の自作自演のショーであると言えます。
観光で大歩危・小歩危を訪れる皆様に於かれましては、是非その景観の裏に隠された古代からの物語にも思いを巡らせてみてください。
1億3000万年かけて整えた舞台の上でポーズを決める巨岩達の熱い思いを感じ取ることができるかも知れませんよ。


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