先週の ”落合集落 長岡家住宅の楽しみ方 ” で約束した”囲炉裏”の詳細を記載します。
インバウンドガイドをやっているとよく質問されることがあります。 日本の家にはなぜ煙突がないのか?と言うものです。
家の中で囲炉裏を焚くのに煙突がない! 煙は一体どこに逃がすのか? しごく当然の疑問と思います。
皆さん、理由、ご存じですか?
日本の古民家では煙突はつけません。 意図してつけないのです。

答えです。 昔の家は茅葺屋根です。 雨が降ると水が沁みます。 放っておくと腐ります。 虫がついて大変なことにもなります。
この問題を囲炉裏が解決しているのです。 すなわち家の中で火を焚くことで屋根を内側から焙ります。 茅は乾燥して劣化しません。 いつまでの当初の状態が維持されます。
更に煙も立ち込めます。 逃げ場のない煙、屋根の茅の隙間に忍び込みます。 とてもじゃないけど虫は住めません。 害虫は燻り出されます。
というために煙突は敢えて付けないのです。 これをつけると防湿効果も防虫効果もなくなります。 人によっては50年もつと言われる茅葺の屋根が5年と持たなくなってしまいます(たぶん)。

しかし心配事もあります。 火事です。
乾燥させた茅の下で火を焚いている訳ですから大変危険です。 火の粉が舞い上がって茅に着火したらひとたまりもありません。 実際火事もたくさん発生していたようです。
なので囲炉裏には細心の注意が払われていたようです。 火の粉を飛ばさない、燃え盛っている時は目を離さない、離れる時は火がおさまってから。。。 そんな感じでしょうか。
火よけというカバーも用いられました。 囲炉裏の上にある四角いやつです。 竹で編まれていました。 これで火の粉が舞い上がるのを防ぐのです。
効果の程は限定的だったかも知れません。 むしろ何かを乾燥させるのに重宝したと言う話も聞きます。 火よけの上で乾物を作ったり、衣類を乾かしたり。。。

火事対策は他にもあります。 但し願掛けのようなものです。 写真のような魚のオブジェです。
これは一般的には横木と呼ばれるようです。 鍋などの高さを調節する“テコ”となる木です。
この横木、一部例外を除き、全国どこでも魚の形をしていると思います。
ここに魚が泳いでいるということは、この空間には水があるはずです。 だとすると、火の粉が舞い上がってもここで消えるはず。 魚を象った横木にはそんな意味があるのです。
そんなアホななどと見くびってはいけません。 年中火を焚いていた囲炉裏。 物心ついたばかりの好奇心旺盛な子どもには「火遊びしなさい」と言っているようなものです。 昔の火事の大半は子供の火遊びが原因だったのかも知れません。
そんな子供に火事の危険性を説いたところで伝わりません。 忘れてすぐに火遊びに夢中になってしまうかも。 でも魚のオブジェを用いて防災意識を高めていたのかも知れません(想像です)。
瞬きをしない魚。 横木にこれを用いるのは一瞬の隙も作らず火事を監視してくれるから、とおっしゃる人もいらっしゃいます。
が、口が聞けない魚。 火事を見つけても伝える術がありません。 どちらかと言うと、瞬きせずに子供を見つめ、火遊びを戒めていたのかも知れませんね(これも想像です)。

縁起を担ぐと言えばジザイも同様です。 囲炉裏の上にぶら下がっている存在感のあるやつです。
先程の魚のオブジェ、並びに竹とカギ棒で構成されています。 鍋などの高さを自由に調節できるのでジザイと呼ぶのだと思います。 たぶん自在と書きます。
このジザイ、竹の中を通っているカギ棒は梅の木でできています。 枝の形を活用して上手にフックを作っています。
そしてテコの役割をする魚のオブジェ。 これは松の木です。
わかります? 松竹梅でできていると言うことです。 昔の人は粋ですね。 こんなところにも縁起を担いでいるんですね。

最後にクンゼです。 上の写真の4本の大きな木のことです。 クヌギだと思います。 コナラかも知れません。
いずれにしても炭によく使われる素材です。 安定して長時間よく燃えるからです。 熾火としても最高です。
このため祖谷では(と言うか、全国同じだと思いますが)、囲炉裏にはクンゼがつきものです。
4本のクンゼはその一端をくっつけて使われますが、夜寝る時間になると離します。 すると火種(祖谷ではこれを ”イコ” と言う)だけ消えずに残ります。
そして翌朝クンゼを再びくっつけ、その上に柴など燃えやすいものを置いて風を送ります。 するとあっと言う間に燃え上がります。
と言うことで、クンゼは囲炉裏に必須のキーパーツなのですが、意外と間近で見られるところがありません。 そして唯一近くで見られるのが先週紹介した長岡家です。 ぜひゆっくりとご覧ください。
以上、囲炉裏の話でした。
この記事では、囲炉裏の防湿・防虫効果について書きましたが、もちろんその主目的は調理です。 それ以外にもこんな驚くべき効果や物語があると言うことです。


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