コエグロの作り方(更なる理解に向けて)

コスモスとコエグロのある風景 祖谷の風土・風習・文化
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祖谷の風景で欠かせないコエグロ。 その作り方について書いてみたいと思います。

コエグロの作り方? 以前も書いてたけど? そう思われたあなた。 ありがとうございます。 ご愛読いただいている証拠です。 そうなんです。 こちらの記事で書いています。

でも、今回は少し違います。 前回は具体的な作り方について紹介しました。 対して今回はその準備~組み上げ方まで更なる理解に向けて幅広く紹介したいと思います。

と言うのは、こちらで告知した通り、10月10日(土)と11日(日)の2日間、東祖谷でジャーニーランが開催されます。

そのときに、”やつまた継承の里” にて ”コエグロ作り体験” も行ってもらう予定です。 どうせなら、単に作るだけでなく、茅の育成~組み立てまで幅広く知っておいてもらった方がコエグロ作りの楽しさが増すかな?と思い、このネタで記事を書くことにしました。

と言うことで、さっそく本題に入りますが、その前に。 「コエグロって何?」と思われた方がいらっしゃるかも知れません。 そんな方はまずこちらをご一読いただいてからお読みいただければと思います。

茅はどうやって育てられるか?

コエグロに用いられる素材は茅です。 ススキでもあります。 どこにでも生えているやつです。

どこにでも生えるので特に育てる必要がないかと言うとそういう訳でもありません。 畑の肥料や家の屋根に用いたので結構な量が必要です。 茅場と呼ばれる場所があって、そこで育てられていました。

茅場の様子

育てられてたと言っても、基本的に草を刈って放置すれば育つのが茅。 特に大きな手間はかかりません。 阿蘇山で行われているように、野焼きをすれば完璧です。 大変よい茅が育ちます。

実際、祖谷でも昔は野焼きを行っていたそうです。 茅場には個人宅用のものと、集落共同のものがあり、集落共同のものは野焼きを行っていたそうです。

松明たいまつに火をつけ、皆で横になって、上から下に火をつけて進んでいきます。 山全体が茅場と言う訳ではなかった祖谷。 下からは火を付けません。 火が上に向かって走りだし、制御不能になるからです。

Anyway、昔は何でも共同作業。 野焼きも集落の一大共同イベントだったようです。

茅はいつ刈るか?

こうして育てられた茅。 刈る時期も慎重に検討されます。 まず一つは穂が出る前に刈るか、穂が出てから刈るか?

穂が出て種子が撒かれた後に刈ると来年もたくさん茅が生えるので、茅を減らしたいなら穂が出る前に刈ることになります。 高齢化で畑もできない人が増えた現代。 そんな人にとっては茅は厄介な雑草。 穂が出る前の柔らかいうちに刈ってしまいます。

きれいな穂を出した茅

そうなんです。 茅の硬さも刈る時期に影響を与えます。 硬くなった茅は刈るのが大変。 結構な労力が必要です。 しかしその分、畑に撒いても長持ちします。 長く肥料として使いたい場合は硬く成長した茅を使うようです。

そして屋根用には更に硬い茅を使うようです。 畑用は10月に刈ることが多いですが、屋根用は11月に刈るようです。 ただし、茅の成長は天候にも左右されるため、育ち具合を見ながら刈る時期を見定めます。

コエグロはどうやって刈るか?

今は草刈り機を使いますが昔はすべて手刈り、すなわち鎌で刈っていました。 大きな農家さんであれば茅場も広く、日持ちさせるために成長させてから刈っていたのでその労力は馬鹿になりません。 1時間も刈ると手がしびれて動かなくなったと言っていました。

と言うことで、家族だけではとても無理なので ”やと” と言って、人を雇います。 祖谷ではこれを ”雇い人する” と言います。

茅は刈られた後、束にしてコエグロとして積み上げられていく訳ですが、その束1把当たり何円という形で賃金が決まっていたそうです。 歩合制です。 一人当たり百何十把も刈ったそうで、貧しい農家さんにとってはありがたい臨時収入だったに違いありません。

刈るのが早い器用人、大量に運べる力自慢、口ばかり動くおしゃべりさん。 色んな人が集まり、あっちこっちで笑い声と歓声が響く、そんな秋の茅場の光景が目に浮かぶようです。

刈ったカヤがキレイに並ぶ様子

ちなみにですが、茅刈りは無造作に行われていた訳ではありません。 刈った茅はきれいに並べて倒します。 そうすれば束にするとき並べ直す必要がありません。

現在は草刈り機を使いますが、見てください、上の写真。 祖谷の皆さんは草刈り機を上手に操作してこんなにきれいに茅を倒します。 こんな些細な光景にも先祖からの伝統が息づいています。

コエグロはいつ組むか?

茅を刈り終わってもすぐにコエグロは作られません。 なぜだかわかりますか? 刈ったばかりの茅はまだ固くて扱いが大変だからだそうです。 暫く放置して柔らかくなるのを待ちます。

かと言って長く放置しすぎると乾燥して再び固くなります。 折れやすくもなります。 ではいつがよいか? 刈った2~3日後が最適だそうです。

と言うことで、茅刈りは、作業の2~3日後の天候なども考えながら計画的に行われていたものと思われます。

束になった茅

そして、ありがたいことに、ジャーニーランに参加する皆さん。

やつまた継承の里の茅は、祖谷雑穀生産組合の皆さんが本番数日前に刈っておいてくれるそうですよ。

当日彼らは顔を出さないと思いますが、みな皆さんが来られるのを心待ちにしています。

コエグロはどうやって組むか?

刈った茅はまず束にします。 その方法は前述の記事で紹介した通りです。 上手に柔らかい穂先だけを使って縛ります。 これも長年かけて編み出された伝統的な技です。

束ねたコエグロは円錐えんすい状に下から積み上げます。 昔は今よりも一回りも二回りも大きかったようで、真ん中に支柱を立てる場合も少なくなかったようです。 倒れると起こすのが不可能なくらい大きかったからと聞いています。

積み上げたら束が外れて落ちないように周囲をぐるりと縛ります。 台湾くず(祖谷では ”くずかずら” と言う)を用いたとも、麦わらの縄を使ったとも聞いています。

一番大事な頭の部分は水が入らないようにしっかりと結びます。 この部分には丈夫な稲わらで編んだ縄を使ったとも聞いています。 現在はビニールひもなどが用いられ、レジ袋をかぶせて雨の侵入を防いでいるものもあります。

屋根用のコエグロ

コエグロは茅を乾かすのが目的です。 どこか広い敷地があればそこに広げて乾かせばよいのですが、とてつもなく広大な土地が必要で非現実的です。

対して、コエグロは狭い土地で大量の茅を効率よく乾燥させることができます。 円錐形なので雨が斜めに走って水が入らないそうです。 屋根用のコエグロは、上の写真のように隙間をたくさん作って、よりしっかりと乾燥できるように工夫します。

コエグロは祖谷以外でも西阿波全体で作られています。 三好市山城町とか、美馬郡つるぎ町とかです。 場所によって束の作り方も組み立て方も異なります。

本日紹介したものは三好市東祖谷のとある伝統農家さんが用いている方法で、たぶん東祖谷ではこのやり方が主流ではないかと思います。

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