釣井集落は祖谷のミニチュア?

観光案内所から見た釣井集落 モデルコース
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東祖谷の面積は228km2です。 大阪市は225km2です。 三好市の一部に過ぎない東祖谷ですが、大阪より広いんです。

なのでちょこっと祖谷を回ろうとしてもそれは無理。 入門編だけでも1日では回れません。

祖谷にハマると観光スポットだけでは満足できなくなります。 その暮らし、伝統、文化なども知りたくなります。 しかし大変広い祖谷。 どこから手を付けたらよいかわかりません。

が、そんなあなたに打ってつけの場所があります。 釣井つるい集落です。

ここの景色には ”祖谷の暮らし” が集約されています。 言わば ”祖谷のミニチュア” です。 本日はそんな釣井集落のミニチュアぶりについて紹介します。

ちいおりに宿泊される方、木村家住宅を見学に行かれる方、天上の林道を楽しまれる方など是非ご覧ください。 そして目的地までの景色もお楽しみいただければと思います。

紹介は写真集で行います。 各々の撮影スポットは下記マップの通りです。

※釣井集落がどこにあるかは ”祖谷の旅/車の窓からの風景とうんちく(後編:東祖谷)” を参照ください。

スタート(滝の瀬橋)

釣井集落入り口

スタートです。 釣井集落への上がり方は2通りあります。 本日は滝の瀬橋から上げるルートを紹介します。

アレックスの橋(仮称)

アレックスの橋

滝の瀬橋を過ぎて少し行ったら来た道を振り返ってみてください。 このような光景が見えます。 先ほど渡って来た橋です。

が、ここで注目して欲しいのはその下にあるもう一つの橋。 ここでは ”アレックスの橋” と仮称します。 今お進みの車道は昭和50年代以降にできたもの。 それ以前は徒歩でした。 なので先々週記事にしたアレックス・カーはこちらの古い橋を渡っていたのです。

彼に興味のある方、ちいおりに行かれる方は是非記事をお読みいただき、この橋とともに当時のアレックスに思いを馳せていただければと思います。 ここからちいおりは結構遠いです。 この山道を上り下りして古民家の改修に当たったのです。

アンカーとホース

アンカーと水道ホース

途中こんな景色に出合います。 水道ホースです。 祖谷では自分家の水は自分で施設・管理する必要があります。 このホースはどこかの家庭に繋がっているのです。

で、ここのこのホース、目の肥えた人なら誰もがうらやむ感じなんですよ。

と言うのは、水道ホースはこのようにたわみを最小限に抑える必要があります。 たわみが大きいほど空気が溜まりやすく、水道トラブルのもとになるからです。 特に冬場は凍結の原因にもなります。

しかし祖谷でたわませずにホースを引くのはまず不可能です。 遠い水源からひく長いホース。 その経路上の地形や条件は様々です。 どうしても上がったり下がったり、あちこちで大きなたわみが発生します。

それに対してこの光景。  地すべり対策用のアンカーを上手に利用しています。 「それあり~?」って感じです。

そしてこのアンカー。 地下深く固い岩盤層に杭を打ち込み、ワイヤーでつなぐことで表層の地すべりを抑制するものです。 地すべりが多い祖谷では大変大事な工事の一つです。 

動く大地と共に暮らす祖谷。 中でも重要な水の管理。 ここでは、地すべりと水という、祖谷の暮らしの象徴を2つを同時に見ることができます。

何気ない風景ですが、是非お見逃しなく。 

廃屋

茅がはみ出している廃屋

廃屋です。 納屋か何かだったのだものと思われます。 そして屋根をよく見てください。 トタンの下から茅がはみ出しています。 昔茅葺かやぶきだった屋根にトタンを被せていることがわかります。

この辺りにはトタン屋根の立派な家が何軒かあります。 そのトタンの下にはすべてこのような茅が残っています。 だから屋根が大きいのです。 是非比較してご覧ください。

ちなみに壁にはたくさんの竹があります。 これも貴重です。 昔はこのように竹を編んでその上に土壁を塗りこんでいたことがわかります。

木村家住宅

木村家住宅

祖谷で最も古い家屋 ”木村家住宅” です。 元禄12年(1699年)の建築です。 今から326年前、赤穂浪士の討ち入りの3年前です。

これは木村家を通り過ぎてから振り向いて撮った写真です。 左が隠居屋、右が母屋です。 隠居屋はこの6月に長い修復作業が完了したばかり。 なので屋根がまだ黄金色こがねいろに輝いています。 見るなら今がチャンス。 是非ご堪能ください。

木村家は人が住んでいる、すなわち生活に使用されている住宅にて、ご覧になる際は、敷地内には入らないようにお願いします。 ラッキーなことに家の人から「どうぞ」と言われたら、その際は感謝の気持ちで拝見させてもらいましょう。

田んぼ跡

田んぼ跡

ここは田んぼ跡です。 祖谷では田んぼは大変貴重です。 地質に恵まれているか、地質改良する労力やお金があるか、そのどちらかでないと田んぼは持てません(詳細はこちら)。 そして裕福な集落だったここ釣井ではきれいな田んぼ跡を何カ所かで見ることが出来ます。

五社神社

五社神社の落書き

五社神社です。 県指定の重要文化財 ”木造の狛犬” がご神体です。 ご神体なので見ることはできませんが、応永29年(1422年)、すなわち南北朝時代に作られた貴重なものなんですよ。

そんな由緒ある五社神社のトタン製の引き戸にはたくさんの落書きが残っています。 そう言えば、私たちが子供の頃、相合傘の落書きは定番でした。

大切な神社に落書きする元気な子ども達。 昔はどこでもそんな子ども達の笑い声が溢れていました。

ちなみにこの神社は車では下りない方がよいと思います。 見たい人は、どこか広い所に車を置いて、徒歩で降りてください。

石垣ゾーン(野面積み)

野面積み

ここら辺りから色んな石垣が見られます。 石垣ゾーンです。

これは典型的な野面のづら積み。 表面がデコボコです。 もともとあったと思われる大きな岩も利用しながら乱積みしています。 クレーンで積んだようにも見えます。

傾斜地だらけの祖谷。 石垣は大変重要です。 そしてその積み方で時代や事情が分かったりもします。

石垣ゾーン(算木積み)

算木積み

これは角に算木積みを意識した積み方をしているものです。 石垣を強固にする積み方として有名な算木さんぎ積み。 熊本地震でこの積み方の有効性が証明されました(具体的にはこちら)。 

算木積みは慶長10年(1605年)頃からお城の石垣に採用され始めたとのことですが、祖谷でも広く普及しています。 蜂須賀家が徳島藩の大名となったのが天正13年(1585年)、蜂須賀方として戦った政所まんどころ喜多家が祖谷を納め始めるのも丁度この頃です。

喜多家を通じて中央(徳島市)との交流もあったようなので、他の地域に遅れることなく、比較的早く祖谷にも算木積みが入って来たのではないかと想像します。

石垣ゾーン(乱積み)

乱積み

乱積みですが石垣の表面がキレイに揃っています。 家の敷地故に丁寧に積まれてたことがよくわかります。 石垣の美しさをお楽しみください。

石垣ゾーン(落積み)

落積み

これは谷積みともおとし積みとも言われる積み方です。 石を斜めに交互に落とし込みながら積んでいきます。 1800年代中期以降に始まった最も近代的で頑丈な積み方だそうです。 しかも固いことで有名な青石(緑色片岩)だけを選別して積んでいるようです。

横ボーリング

横ボーリング

山側にこのような景色も見ることができます。 横ボーリングと言います。 地すべりの原因となる地下水を集めて排水しているのです。

四国は地すべり多発地帯。 そして祖谷はそのメッカです。 地すべり対策があちこちに施されています。 そしてここもその一つ。 是非ご確認ください。

傾斜地農法ゾーン

傾斜地農法ゾーン

石垣ゾーンを過ぎると今度は傾斜地農法ゾーン、すなわち傾斜地農法を間近で見ることができる貴重な場所です。

土を下に落とさないよう、下から上へと土を上げながら耕すのが祖谷の農業の基本。 畑に立って作業をしている自分を想像してみてください。 大変さがイメージできると思います。

祖谷は輪作、すなわち四季折々、同じ畑で様々な作物を回しながら育てます。 上記写真はジャガイモを育てているところです。

廃墟跡

杉やぶの中の民家跡

これは何かわかりますか? 石垣です。 また石垣? そうではありません。

杉やぶの中に石垣がある意味がわかりますか? たぶん昔はここら一帯は畑でした。 そして石垣の上には民家が建っていました。

それが町に引っ越すことになり、家はそのままにして、周りの土地に杉を植えて出て行ったのです。 そしてそのあと家はつぶれて更地になった。 石垣の上の平らな部分に杉がないのがその証拠です。

杉やぶの中の単なる石垣に見えますが、祖谷の歴史が刻み込まれているんですよ。 この話、更に興味がある方はこちらをどうぞ!

ちいおり

ちいおり看板

もう少し行くとこんな看板が右に見えます。 ”ちいおり(篪庵)” です。 上述のアレックス・カーが最初に改修した古民家です。

あいにくここは個人宅で今は宿泊施設になっています。 なので見学はできません。 茅葺かやぶきの屋根は見えますのでそれで我慢しておきましょう。
※宿泊客がいなければ見学はさせてもらえるかもです(昔はできました)。興味のある人はこちらに問い合わせてみてください。

三社神社

三社神社

ここは三社神社です。 祖谷には ”東祖谷の社叢しゃそう群” と言う県指定の重要文化財が7カ所あります。 そしてここがその一つです。 社叢とは神社の神域を構成する樹木のまとまりのことを言います。 

これら7つの社叢群はなぜか丁度標高750m辺り、すなわち温暖帯と冷温帯の境界に位置します。 なのでその両方の気候帯の樹木が観察でき、しかもそれが県下有数の大樹として維持されています。 それが文化財に指定されている理由です。

そしてここ三社神社は、アラガシ、ウラジロガシ、トチノキなどの大木が残り、特にイタヤカエデという唯一葉っぱにギザギザがないモミジの木の大木があると言われています(私もまだ視認できていないためこのような表現になっています)。

天上の林道入口

三嶺と天狗塚の風景

熊谷林道の入口に到着しました。 私が天上の林道と呼んでいるところです。 本記事ではここをゴールとします。

ここからは、標高1,894mの三嶺、同1,182mの天狗塚、が見えます。 下から見ても美しい、登っても美しい。 どちらも祖谷で大変愛されている山です。 釣井集落周遊コースのゴールとして是非神聖な山々の景色をお楽しみください。

以上。

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